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兵庫県宝塚市役所に隣接する武庫川には、秋の深まりとともにマガモがやって来ます。
そして、いつの間にかハクチョウも川面に浮かんでいる。過去オオハクチョウ(渡り鳥)、コハクチョウが来たこともあります。
今回のコブハクチョウは「宝塚市の隣、伊丹市の昆陽池(こやいけ)に放し飼いにしていたのが飛来して住みついた」らしい。
(毎日新聞阪神版2015年10月31日朝刊)
コブハクチョウに聞き取りしたわけでもないのに、「他の鳥と折り合いが悪いため、居心地のよい新天地を求めて飛んできた
可能性がある」と新聞に記されていました。→毎日新聞がどういう調査をしたか知りませんが、この記事は間違い。
(詳細は2枚下。記事の誤りは11月5日にわかりました)
武庫川のコブハクチョウは全長150センチ(羽を広げたとき)と標準的な大きさで、ばかでかいオオハクチョウよりは
見た目かわいい。
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新聞の記事によると、「コブハクチョウはもともと国内に人為的に持ち込まれた外来種で通年、国内にいる。
飛び立って電線などにぶつかって負傷したり、人に当たったりしてトラブルになるのを防ぐため毎年一回、
羽の一部を切って飛べないように管理している」らしい。
羽を切られたほうはえらい迷惑、飛べなくなったら鳥ではないじゃんと抗議するにも言葉はしゃべれない。
毎日新聞のコブハクチョウはこの子たちの親で、ツガイの親鳥は昆陽池から宝塚市内の池に移ってきました。
母鳥が産んだ5羽のうち3羽は死に、生き残った兄弟2羽が武庫川に引っ越したのです。
捕獲なんてとんでもないし、捕獲されて羽を短く切られても、時間が経てば羽は伸びてきて再び飛び立てるのです。
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コブハクチョウの名は、くちばしの付け根あたりが黒いコブのようになっていることから命名されました。
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伊丹市は今後、2羽を捕獲して昆陽池に連れもどす方針らしい。
捕獲されたらかわいそうと家内は言い、そうなる前にと11月1日ハクチョウと対面。
自宅からここまで徒歩3分の距離なので、いつでも来ることができると思うと、かえって頻繁に来ないものです。
小生は夕方の散歩でほぼ毎日ハクチョウを見ております。
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ハクチョウと一緒にいるのはマガモです。
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ハクチョウに関して興味深い考察があります。鳥類についての文章ではなく飛鳥時代の仏像についての
学術論文です。「法隆寺金堂釈迦三尊像台座内の墨画と銘文−鳥と魚の意匠と死後の世界−」の名で
書き記された論文(川端真理子 季刊「古代文化」 第53巻 第2号 2001年2月刊?)を引用すると、
「首が長く自由自在によく動く鳥にはハクチョウがある。ハクチョウの頸椎骨はガン類に比べて多く、首が自在に曲がり
さらに筋力も強いのが特徴である。墨画の鳥は嘴が長くないうえ脚が短く、背中の丸みを帯びたカーブや口先の
開き方がハクチョウに近い。」
川端真理子氏は折口信夫の「鳥の遊び」(折口信夫全集第五巻)のハクチョウに関する一文、「古事記」の景行天皇の条
「ヤマトタクル」がハクチョウに変化(へんげ)し天翔るシーンを紹介しています。
さらに、「ハクチョウは霊魂あるいは霊魂をはこぶ鳥と考えられていた(中略)」、 「古墳時代もしくはそれ以前から、
ハクチョウに対する信仰が存在したことは明らかである。台座墨画の鳥はハクチョウと考えることができ、飛鳥時代唯一
の作例として日本古代におけるハクチョウ信仰の系譜の上に位置づけられるのである」と記しておられます。
上記論文の作成日は不明です。
「法隆寺仏像台座の墨画には当時の世界観がこめられているものと思われる。
仏教における来世としての浄土へ、神話的な冥界へ赴くのと同様に船に乗り、鳥に導かれて行くと
理解されていたことが推知されるのである。」と結んでおられます。
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ここからは2015年11月6日夕刻に撮影したコブハクチョウです。
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皇帝ダリアの茎は竹のようなフシがあります。
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毎年11月中旬〜下旬に咲きそろう武庫川河川敷の皇帝ダリア。
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ねぐらに帰るサギ。2015年11月12日。
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2015年11月12日
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